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2014年12月 1日 (月)

ルールとマナーの違い

ある警察署のホームページに「交通ルールを守るというマナーを身につけ・・・」とあり、びっくりしました。

倫理学では、人間の行為を5つに分けています。
1絶対やらなければならないこと
2できればやったほうがいいこと
3やってもやらなくてもどちらでもいいこと
4できればやらないほうがいいこと
5絶対やってはいけないこと
まず、3について。たとえば、靴をはく時、別に左からはいても右からはいても、誰にも迷惑かけるわけでもないしどちらかからはかなければ何か問題があるとかもないし。3に入るのはこういう行為です。
問題は1と2、4と5です。まず1と5について考えます。「車は左側を走らなければならない」とか「人を殺してはいけない」などは、これはそう決めておかなければ自分を含めた社会がめちゃくちゃになります。絶対守らねければなりません。ですから、法律というルールで縛りをかけることになります。
では、2と4についてはどうでしょうか。たとえば電車内で「お年寄りに席を譲る」とか「足を広げて座らない」とか。これがルールになれば、お年寄りが乗ってきたら絶対席を譲らなければならないし、絶対足を閉じて座ることになります。
ルールはみんなが(そのルールの範囲内のみんなという意味です。以下同じ)絶対守らなければなりませんから、ルールは人間の行為を強く縛ります。今の日本は自由な国ですから、人間の行為を強く縛ることは最低限にしなければなりません。そうでなかったら、自由の国ではありませんね。ですから、2と4のことを1と5にするためには、それなりの理由が必要です。1や5にしないと、つまりみんながその行為をする(しない)ようにしなければ自分や他人が生命や財産などに大きなダメージを受けるとか、社会がむちゃくちゃになるとか、そういった大きなことが起こるからという理由がなければ、1と5つまりルールにするべきではない。
そう考えると、電車の中で「お年寄りに席を譲る」や「足を広げて座らない」は、それをルールにしてみんなが絶対守らなければ、どんな損害があるのでしょうか。もし、これが大きな損害だって言えることがあれば、当然ルールにすべきです。少なくとも私は、この2例についてはそんな大きな損害があるとは思えません。たぶん多くの人もそう思っているのでしょう。だからこれらは、「ルール」ではなく「マナー」なんです。「マナー」は、みんなが絶対守らなければならないものではありませんから、「私はやったほうがいい(やらないほうがいい)と思う」という、あくまでも個人的な価値観に基づく「道徳」であると言えます。実際私はお年寄りの席を譲ったほうがいいと思ってますし、足を広げて座らないほうがいいと思っています。でも、他人に強制すべきとは思いません。
こう考えてみると、先に書いた「ルールを守ることがマナーである」とは、「絶対やらなければならない(やってはいけない)ことをやる(やらない)ことは、できればやったほうがいい(やらなくてもいい)」と言っているわけで、これは明らかにおかしいですね。できればやったほう(やらないほう)がいいできればやったほうがいいのなら、絶対やらなければならない(やってはいけない)わけではないですから。ちなみにこの逆、絶対やらなければならない(やってはいけない)ことは、やったほう(やらないほう)がいい、も矛盾ですね。
こうした混同が、実は今けっこう多くみられる気がしています。「~したほうがいい(しないほうがいい)」が「~しなければならない(してはいけない)」に読み替えられている。子育ての分野でも、「小さいころにピアノのおけいこを受けたほうがいい」が「ピアノのおけいこを受けさせなければならない」にかわってしまう。この「ピアノ」が「体操」や「スイミング」や「勉強」にかわると、習い事をかけもちする忙しい子どものできあがりです。
「ねばならない」と「のほうがいい」を、きっちりわけて考えるようにしなければと思います。そして、今盛んに言われている「ねばならない」を検討すると、けっこうたくさんの「のほうがいい」の読み替えがあるのではないかと思っています。その読み替えがはやる世の中って、けっこう問題があるんじゃないかと考えています。この問題についてはここではくわしく述べません。
私は、私たちの生きづらさの原因のひとつにこの読み替えがあるように思っています。今この読み替えを見破る力が、求められているのではないでしょうか。

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