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2015年3月 7日 (土)

少年院基礎知識~なぜ少年事件の加害者の実名報道はいけないのか

少年法では,少年犯罪者の実名や顔写真の報道は禁止されていると言われますね。その根拠としては,少年法第61条にこうあります。長いですが引用します。
第六十一条  家庭裁判所の審判に付された少年又は少年のとき犯した罪により公訴を提起された者については、氏名、年齢、職業、住居、容ぼう等によりその者が当該事件の本人であることを推知することができるような記事又は写真を新聞紙その他の出版物に掲載してはならない。
これだけ見たら,審判や裁判に付され「ない前の」少年,つまり逮捕中とか取り調べ中とかの少年,については報道してもよいみたいに思うかもしれません。しかし,少年事件は全部家庭裁判所に送られて審判が開かれる建前になっていますので,将来審判に付される可能性がある少年ということで,この規定が使えます。ちなみに,被害者はこの規定に入りません。
さて,ではなぜこんな規定があるのでしょうか。少年法第1条を見てみます。
第一条  この法律は、少年の健全な育成を期し、非行のある少年に対して性格の矯正及び環境の調整に関する保護処分を行うとともに、少年の刑事事件について特別の措置を講ずることを目的とする。
少年法では,「少年の健全育成」のために,非行少年の「性格の矯正」と「環境調整」をするんだとしています。第61条の規定は,この「環境調整」のためであると言えます。
世の中は,犯罪者に対して冷たい社会です。昔悪いことをした人は,今どんなにいい人でも色眼鏡で見られます。それは大人だけでなく子どもも同じです。子ども時代に悪いことをした人は,「そういうことをした人」と思われます。こういった考えが,非行少年の社会復帰を邪魔していることは,だれしも認めるところでしょう。そういった社会復帰の邪魔になるようなことはなくしていく。これが「環境調整」のひとつなんです。
非行少年に対する色眼鏡がないのであれば,こんな規定は必要ないんです。ですので,顔写真や実名報道したかったら,そういった色眼鏡をなくしてからこの規定を外せばいいのであって,少なくとも今は,許されることではありません。
非行少年は,少年院や少年刑務所に入っても,いずれ社会に戻ってきます。その時に,うまい具合に社会復帰できなければ,また悪いこととをしてしまいます。いくら非行少年を社会の隅に追いやっても,塀の中に隔離するわけにはいきません。彼らがいるところは社会の一部ということは,私たちの生活の一部でもあるんです。ですので彼らの行動が私たちの生活に影響ないとは言えません。見えないところに追いやったらそれでおしまいというわけにはいかないんです。社会の隅に追いやられ,誰からも相手にされない人が行く先は,もうおわかりですよね。再犯しかありません。
ならば,非行少年を隅に追いやるのではなく,社会の一員として迎え入れ,犯罪しなくても生きていけるようにしてあげる。これしか方法はないんです。そりゃ,悪いことした人に対して憤りもあるでしょう。こんな人いなくなればいいと思うでしょう。しかし,そんな気持ちで走ったら,けっきょく社会の安全が守られず,自分の首を絞めることになるんです。
犯罪者や非行少年を社会復帰させることは,実は自分たちの社会や生活を守る有効なやり方なんです。とかく非行少年の人権を守るための規定だと思われがちな第61条ですが,実は社会防衛の役割も果たしているのです。
だから,顔写真や実名の報道はいけないことなんです。

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