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2015年3月26日 (木)

体罰の定義

世間では広く,体罰はダメだと言われています。でも,なくならない。どうしてでしょうか。私は,体罰の定義に問題はないかと考えています。
体罰の定義で広く使われているのは以下のものです。
「委員会は、「体」罰を、どんなに軽いものであっても、有形力が用いられ、かつ何らかの苦痛または不快感を引き起こすことを意図した罰と定義する。」(国連子どもの権利委員会一般意見8号 2006年 平野裕二訳)
整理すると,
1 有形力(直接的に人を殴るとか蹴ると言った直接的な暴力※)を行使し,
2 何らかの苦痛又は不快感を引き起こすことを「意図」した
罰だということです。
※『刑事事件弁護士ナビ』「暴行罪とは~刑事事件に感ずるコラム」から抜粋 https://keiji-pro.com/knowledge/boukouzai/)
1の「有形力」の行使については異論はありません。問題は2です。
苦痛や不快感を引き起こす「意図」でやった罰なのかが問題になっていますね。では,
a 苦痛や不快感を引き起こすことを「意図しなかった」ら,かつ,
b たたかれても苦痛や不快感を持たない人に対しては,
たたくことが体罰にならないということになってしまうのではないでしょうか。
たとえば,誰かを励まそうとして肩を軽くポンとたたく。これは体罰にならないのでしょうか。普通はならないと考えるでしょう。軽くたたかれたぐらいでは苦痛はないですし。自分を励まそうとしてやってくれたことですから。うれしいと思うことはあっても,セクハラを感じることがなければマイナスに取ることはないでしょう。これが,ドンと強くたたいたらどうでしょうか。ドンとたたかれたら,確かに痛いですね。
しかし,肩をたたく方も,励まそうとしてやったことですから,痛い思いをさせて「苦痛や不快感」を持たそうとしてやってるわけではないんですよね。そりゃ,たたかれたら痛いことぐらいは,普通の大人なら知っています。しかし,その痛みは,励まされてうれしい気持ちに拭い去られることも知っています。たたく方は,それをわかって,励まされてうれしいと思ってもらうことを意図してたたくんです。これが上記aの場合です。
また,たたかれるほうも,確かにたたかれた時は痛くても,これが自分を励ましてくれていることがわかったらどうでしょうか。たたいてくれた相手の気持ちがうれしいなんて思って,励まされた気持ちが「苦痛や不快感」を拭い去ってしまうのではないでしょうか。たとえば「活入れ」なんかを想像してください。それで気持ちがしゃんとして前向きになれたら,「たたかれたんじゃない。活を入れられたんだ」なんて。この経験が積み重なると,たたかれることが「苦痛や不快感」ではなくなってきます。これが上記bの場合です。
そう考えると,「苦痛や不快感」を与える「意図」なくたたくことは,体罰ではなくなってしまいます。実際「愛のムチ」論者は,たたくことで自分の愛情を子どもなどに伝えることを「意図」してたたいています。体罰をする人は,みんなが子ども憎しでたたいてるわけではないんです。また,「愛のムチ」論者には,たたかれて育った人もたくさんいます。自分がされた体験をありがたく思っているんですね。
たたかれたら誰でも「苦痛や不快感」を持つわけではありません。特に,「愛のムチ」を言い訳にたたかれてきた子どもは,たたかれても「苦痛や不快感」ではなく肯定的にとらえます。先にあげた体罰の定義を考えた人たちは,子どもはたたかれたら「苦痛や不快感」を持つものだという前提があるのでしょう。しかし,その前提にはずれる子どもたちもいるのです。そういった子どもたちなら体罰をして,もちろんいいはずがありません。
私は,この「苦痛や不快感」を与える「意図」でもってたたくことを体罰の定義にしたくないんです。
私は,体罰する側される側の「間柄」で判断したと思っています。支配被支配関係の間柄のなかで相手を支配する(つまり言うことをきかせる)ための有形力を「体罰」と考えたいです。もちろんこれは,単に私がそう考えているだけのものですし,まだまだ考えを練られていないので,大きな顔をして人に披露できる代物ではないですが。基本的にはこう考えたいです。
ちなみに,上記の肩をたたくケースでは,自分の言うことを相手にきかせるために励ます(先生の出した課題をやらせていて子どもがくじけそうになったときなどを想定しています)のであれば,先生が生徒をたたくのは,ポンとたたくのもNGです。たとえば子どもがしたいことをしようとしてでもくじけてしまっているのを励ましたい,というときは強くたたくのもOKです。先輩後輩でも同じです。友達同士でも,いじめの関係など支配被支配関係があれば,NGです。ほんとうにフラットな関係であれば,強くたたくのもOKです。また,普段フラットな関係でも,どちらかが(または集団で誰かに)何かを強く訴えかけると,お互いの気持ちの上で一時的な支配被支配関係になることもありますので,ケースバイケースで考えなければなりません。なお,OKのケースでも,ケガをさせたとかびっくりさせたとかこわがらせたとか,度を越した強さであれば,違う意味でNGになります。
余談です。体罰を快楽説で考えようとするあたり,西洋的(英語圏的?)だなあと思っています。もちろんだからダメだといっているわけではないですよ。ただ,なんとなくです。

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