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2016年2月20日 (土)

バケツを持って廊下に立たせるのは体罰か?

「これって・・・体罰?教育?」http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q14156009134

Yahoo!知恵袋にアップされた質問です。私(yc_pgbkx)も回答しています。文科省の体罰の定義に即して,これは体罰です。また,子どもの品位を落としていることから教育でもない。さらに,先生の懲戒権を逸脱していることも指摘しております。詳しくは私の回答をご覧ください。ここでは,さらに違う観点からこの罰を考えます。

子どもの権利条約ができて,国連にも子どもの権利を守るための子どもの権利委員会ができました。その委員会による体罰の定義です。少し長いですが引用します。

11.委員会は、「体」罰を、どんなに軽いものであっても、有形力が用いられかつ何らかの苦痛または不快感を引き起こすことを意図した罰と定義する。ほとんどの場合、これは手または道具――鞭、棒、ベルト、靴、木さじ等――で子どもを叩くという形で行なわれる。しかし、たとえば、蹴ること、子どもを揺さぶったり放り投げたりすること、引っかくこと、つねること、かむこと、髪を引っ張ったり耳を打ったりすること、子どもを不快な姿勢のままでいさせること、やけどさせること、薬物等で倦怠感をもよおさせること、または強制的に口に物を入れること(たとえば子どもの口を石鹸で洗ったり、辛い香辛料を飲み込むよう強制したりすること)をともなう場合もありうる。委員会の見解では、体罰はどんな場合にも品位を傷つけるものである。これに加えて、同様に残虐かつ品位を傷つけるものであり、したがって条約と両立しない、体罰以外の形態をとるその他の罰も存在する。これには、たとえば、子どもをけなし、辱め、侮辱し、身代わりに仕立て上げ、脅迫し、こわがらせ、または笑いものにするような罰が含まれる。(子どもの権利委員会一般的意見8号(2006年)体罰その他の残虐なまたは品位を傷つける形態の罰から保護される子どもの権利)http://homepage2.nifty.com/childrights/crccommittee/generalcomment/genecom8.htmから引用。文字の色は私。

ではバケツをもって廊下に立たせるという罰は,「有形力を用い」という定義には引っかからないように見えますね。有形力といえば,一般的にはたたくとか蹴るとかつねるとか,直接体にインパクトを与えることです。立たせるというのは,直接体にインパクトを与えませんね。しかし,この定義では「子どもを不快な姿勢のままでいさせること」も体罰に含みますね。ただ単に立っていることも,たとえばけがをしていたり障害があったりする子どもにとっては不快です。またバケツを持って立つというのは,重いものを持って立ってますのでしんどいです。さらに,バケツを持って立つためには力を入れて立たなければならず,リラックスして立つことはできないため,いわばほぼ「気をつけ」の姿勢しかできません。短時間(1分ぐらい)ならまだ大丈夫でしょうけど,それ以上はしんどいはずです。どの子にとっても不快でしょう。ということで,直接的なインパクトがなくても,立たせるのは有形力を用いることになります

また,「苦痛または不快感を引き起こすことを意図した罰」ですが,ここで大事なのは「意図する」です。つまり,子どもが「苦痛または不快感」を持たなかったとしても,罰を与える側が「意図」したらこれは体罰なんです。そこで「バケツを持たせる」ことを考えます。なぜ「バケツを持たせる」のでしょうか。それはバケツを持った方が体がしんどいから,ですね。ですので,「苦痛または不快感を引き起こすことを意図した」といえます。あきらかに体罰ですね。

このように,「バケツを持って廊下に立たせる」ことは体罰です。

さて。この定義では,「残虐かつ品位を傷つけるものであり、したがって条約と両立しない」「体罰以外の形態をとるその他の罰」についても,言及しています。「子どもをけなし、辱め、侮辱し、身代わりに仕立て上げ、脅迫し、こわがらせ、または笑いものにするような罰」ですね。「廊下に立たせる」という罰はどうでしょうか。なぜ廊下に立たせるのでしょうか。教室内の子どもには,「先生のいうことをきかなかったらこうなるんだぞ」と,教室外の人には「この子が先生のいうことをきかない子だ」とアピールするため,つまり「さらしもの」にするため,ではないでしょうか。いや,仮に先生にその意図がなかったとしても,ほかの子にとってはそういったアピールに取ってしまうのではないでしょうか。とすると,廊下に立たせるというのは,子どもを辱め笑いものにする罰といえますね。体罰と同じものだといえます。ちなみに文科省では,教室内で立たせるのは体罰ではないとしてやっていい懲戒としています。ここは国連と文科省とで考えの違いがありますね。

こうして考えると「バケツを持って廊下に立たせる」というのは,完全に体罰だということになります。しかも,子どもの尊厳を踏み潰す,恥ずべき罰だということもいえます。いまだにこんなことやってる先生がいるとは信じがたいですが,もしいるのなら,今一度最初から勉強しなおしていただいきたいですね。

文科省の体罰の定義についてはこちら。

「(1)教員等が児童生徒に対して行った懲戒行為が体罰に当たるかどうかは、当該児童生徒の年齢、健康、心身の発達状況、当該行為が行われた場所的及び時間的環境、懲戒の態様等の諸条件を総合的に考え、個々の事案ごとに判断する必要がある。この際、単に、懲戒行為をした教員等や、懲戒行為を受けた児童生徒・保護者の主観のみにより判断するのではなく、諸条件を客観的に考慮して判断すべきである。

(2)(1)により、その懲戒の内容が身体的性質のもの、すなわち、身体に対する侵害を内容とするもの(殴る、蹴る等)、児童生徒に肉体的苦痛を与えるようなもの(正座・直立等特定の姿勢を長時間にわたって保持させる等)に当たると判断された場合は、体罰に該当する。」(体罰の禁止及び児童生徒理解に基づく指導の徹底について(通知))http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1331907.htm

立たせることについては「認められる懲戒」に「授業中、教室内に起立させる」があります。(学校教育法第11条に規定する児童生徒の懲戒・体罰等に関する参考事例)http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1331908.htm

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