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2016年6月 8日 (水)

ヤンキーの子を食い物にするな!!


つまり,介護職員の「ひとり親方」化を進めようとする意見ですね。地方のヤンキーたちを介護職員にして,独立させてひとり親方にさせる。個人事業主にすると,がんばればがんばっただけ収入が上がるから,「定収入でも家族や仲間とまったり過ごしたい」彼らも上昇志向を持つようになるだろう。介護職員確保にもなって,いいことだと言いたいんでしょうね。


はっきり言います。ふざけるな!!


今「ひとり親方」といえば建設業ですね。現場に入っている職人さんは,下請けの個人事業主である人が多いです。そういう職人さんたちは,元請けの建設会社から仕事をもらって現場に行きます。職人さんをひとり親方にすると,会社の側は,社会保険料や雇用保険料の負担もないし,その他の社員に対する費用や事務の負担がないわけですから,コスト削減になります。ひとり親方も,「労働基準法の縛りなく働けます」のでがんばったぶんだけお金がもらえます。どちらにもいいことずくめだと言いたいんでしょうね。


でも,ほんとうにそうなんでしょうか。職人さんたちは個人事業主ですから,労働基準法の勤務時間の制限がありません。しかも請け負うときは一仕事でいつまでにいくらの請け負い方をしますので,請け負わせる側は,労働基準法による労働時間内でおさまらない工期設定でもOKなんですね。もちろん断ることもできますよ。でもそれでは仕事がもらえない。仕事がもらえなかったら収入ゼロですね。それで,無理な工期で朝から晩まで働かされる。


今建設現場では,日曜日だけ休みになっています。土曜日も朝から晩まで仕事しているんですね。うちに事務所の裏もホテル建ててるんですが,土曜日も朝から晩まで職人さんが働いていますよ。あんなの,職人さんがもし社員さんであったら完全に労基違反なんですが,でも職人さんは個人事業主なのでOKなんですよね。


また,ケガをしても労災保険の任意加入をしておればまだ救われますが,入っていなかったら全額実費です。もちろん社員さんは事業主が強制加入ですから,そんな心配は無用ですが,ひとり親方は個人事業主ですからね。労災保険料も自前です。


しかも,労災を請求したら,その現場の安全はどうなっているのか調査するために労働基準監督署が入ります。建設会社はこれを嫌がるんですよね。だって,どんな現場だってたたけばほこりが出るんですから。「目をつけられる」わけです。ですので,「暗黙に」労災を使うなという空気があると言います。そうなると,いくら労災に入っていてもケガの保障は何もないわけですね(実は損害保険会社はここに目をつけて,ひとり親方に,労災を使わなくてもけがの治療が保障されますよという商品を売るんですね。もちろん,労災の「上乗せ」という名目ですが。これ,けっこう売れてます)。


もちろんこれは,最近行政の指導がかなり徹底しているので減ってきてはいるみたいなことです。しかし,元請けに「迷惑をかける」ことにはかわりないわけですから,労災を使うのも気が引けますよね。また,労災を使った職人さんは次の現場に使ってもらえないといううわさもあります。もちろん社員の職人さんはそんな心配は皆無です。でも,ひとり親方は,違うんですよね。


そう考えると,ひとり親方になるのも問題あるなと思います。でもね。そういうひとり親方のあり方に親和性がある人たちがいるんですよ。そう。ヤンキーの子らなんですね。


彼らは,自分ががんばったぶんだけお金がもらえて,しかも「雇われている」のではない立場であることがうれしいんですよね。そりゃそうです。ヤンキーになるような子は,労働時間の規制は完全無視で働いても働いても低賃金で,雇い主から理不尽なことを要求される,いわゆるブラック企業での就労経験しかないわけですから。雇われるっていうことのイメージが悪いんですよね。「労働者の権利」なんていってもピンとこず,働くとはそういうものだ,と思ってしまっている。


さらに,今自分はこうなったのは,勉強しなかったからだとか親や先生の言うことをきかなかったからだとか,つまり「自己責任」だとさんざん言われていますので,世の中は自己責任が当たり前,自分のケガなどを誰かから保障してくれるという考えになじまなくなっています。ひとり親方の資質じゅうぶんですね。


そうやって,「合法的に」ブラックな働き方をさせているのが「ひとり親方」制度なんです。ヤンキーの子らは,そういう働き方しかさせてもらえず,でももたなくてやめてしまったら「根性がない」とか「だからヤンキーは」とか言われる。余計にちゃんとした働き方ができない,の悪循環です。


そして,学校などからドロップアウトする子は確実にいますので,換えは何人でもいるわけです。この子がつぶれても,一部のもつ子だけいればいいわけですし,子どもがつぶれるのは子どものせいに知るわけですから,世の中はいつまでもこの体制を変えようとしませんね。そうやって,学校などからも働くことからもドロップアウトせざるを得ない子どもを量産しているのです。


さて。今は建設業が多いこの制度ですが,今度は介護にも使おうとしています。そうなったら,ヤンキーの子らは建設だけでなく介護でも,ブラックな働き方をさせられることになります。


そりゃ,介護業者はいいですよ。労基も労災も考えなくていい安価な労働力を手に入れられるんですからね。さらに政府も,介護報酬を安くあげられますから,願ったりかなったりでしょうね。でも,ヤンキーの子ら側からするとどうですか。やはり労働者としての人権を無視しされた働き方しかできないんですね。


これって,ヤンキーの子らを食い物にしているだけじゃないですか。


こんなひどいこと,私は許せない。そりゃ,ヤンキーの子らは世の中に迷惑なことしたかもしれない。でも,だからといって世の中の食い物にされる筋合いはない。ヤンキーの子らを食い物にするから,彼らは立ち直れないんです。


私はヤンキーの子らとともにある身として,こういったヤンキーの子らを食い物にするようなやり方に断固反対します。

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